伝説
観音がもっとも人の心を打つのは、その「あきらめなさ」です。言い伝えでは、観音はとうに仏となる資格を備えていながら、こう誓いを立てました。まだ一人でも苦しむ衆生(しゅじょう)がいるかぎり、仏の位には就かず、この世に留まって救いつづける、と——これが「声を聞いて苦を救う(聞声救苦)」です。
台湾の人々は、こんな現代版の話をことのほか好みます。ある人が海に落ち、必死に「観音菩薩、お助けを」と叫びました。船が来ても乗らず、ヘリコプターが来てもなお乗らず、ひたすら菩薩が姿を現すのを待ちます。溺れて亡くなったあと、彼は観音に問いました。「あんなに大声で叫んだのに、なぜ助けてくださらなかったのですか」。観音は答えました。「船もヘリコプターも、みなわたしが遣わしたのですよ」。
民間はこの話でたがいに戒め合います。菩薩の救いは、目の前の機会のなかにひそんでいることが多い——霊験があるかどうかは、あなたがその手を伸ばして掴むかどうかにもかかっている、と。
