詳細紹介
送神の日、主婦はかまど神(灶神)の口に甘い水飴をひとぬりします——天庭に昇ったとき、この家のことを少しでも良く言ってほしいと願って。これが台湾のお正月、最初の細やかな心遣いです。旧正月は台湾で最も大切な伝統行事で、旧暦十二月から一連の準備と習わしが始まり、その一つ一つに深い祝福と文化の厚みが込められています。
年越しの準備
お正月の準備は、旧暦十二月十六日の「尾牙(ウェイヤー)」で幕を開けます。雇い主が従業員を宴に招き、一年の労をねぎらう日です。続く旧暦十二月二十四日は「送神日」。かまど神を天庭へ送り、玉皇大帝にこの家の一年の行いを報告してもらいます。そこから、かまど神の口に水飴を塗り、「良い言葉を天に伝えて」と願う習わしが生まれました。大晦日の一週間ほど前からは大掃除「掃塵(そうじん)」を始め、旧年の厄を払い落として新春を迎えます。家々は正月用品を買い込み、台北・迪化街のような問屋街は人であふれ、年の瀬の風情が濃く漂います。
大晦日の囲炉(いろり)
大晦日の夜は家族そろって年越し料理を囲みます。これを「圍爐(囲炉)」と呼び、伝統的には食卓の下に炭火の炉を置いて、一家団欒と繁栄・温もりを象徴しました。食卓には縁起をかつぐ料理が欠かせません。長年菜(切らずに丸ごと調理するカラシナ)は「長寿」、魚は「年年有余(毎年余りがある)」——しかも食べ切らず元旦まで残してこそ「余り」になります——、菜頭(大根)は「好彩頭(縁起が良い)」、年糕は「歩歩高升(一歩ずつ上昇)」、餃子は元宝(昔のお金)の形から「招財進宝」を表します。今では鍋を囲む囲炉が、台湾の家庭で最もよく見る年越し料理の姿です。
お年玉と守歳
年長者は大晦日の夜か元旦に、子や若い世代へお年玉(圧歳銭)を渡します。赤い封筒にはめでたさと祝福が込められています。「圧歳」はもと「邪祟(邪気)を抑える」意味(「歳」と「祟」が同じ音)で、子どもが無事に育つよう願うものです。金額は偶数や縁起の良い数字(600、1200、2000など)を選び、「4」は避けます。既婚者は両親や年長者にもお年玉を包み、孝心を表します。お年玉を配り終えたら、一家で「守歳」——夜通し起きていると、両親の寿命を延ばせると伝えられています。
春聯と正月飾り
門の両側には、吉祥の言葉を書いた赤い対聯(春聯)を貼ります。ふつう大晦日までに貼り終え、多くは新年の平安や財運を祈る言葉です。門に「春」や「福」の字を逆さに貼るのは、「春が到来」「福が到来」の語呂合わせ。窓には赤い切り絵を貼り、戸口には爆竹をかたどった飾りや赤い提灯を掛け、あたり一面がめでたさに包まれます。
元旦から五日目までの習わし
● 元旦:新しい服を着て年始回り「走春」に出かけ、廟で一番乗りの「頭香」を競います。掃除はしない(財運を掃き出すため)、茶碗や皿を割らない(割ってしまったら急いで「歳歳平安」と唱えます)。
● 二日目:回娘家。嫁いだ娘が婿と手土産を連れて実家を訪れる、実家が最も賑わう日です。
● 三日目:赤狗日。伝統的に年始回りを控える日で、「ねずみの嫁入り」の日ともされ、早めに灯りを消して休みます。
● 四日目:接神日。天上の神々を人間界の持ち場へお迎えし、各廟で接神の儀式が行われます。
● 五日目:開工日(隔開日)。商店が店を開けて営業を再開し、爆竹を鳴らして財神を迎えます。勤め人も仕事に戻ります。
そのほかの正月の要素
正月花(水仙、蘭、銀柳、梅)、爆竹、龍舞・獅子舞、年始回り、そして廟での光明灯の点灯や安太歳(太歳を鎮める祈願)も、台湾の旧正月に欠かせません。各地の廟は春節に「発財金」や「平安符」を授与し、信者が長い列をつくって新年の福を求めます。
