詳細紹介
隊列の一番先頭を、笠をかぶり短い上着を着て、口には煙管をくわえ、鼻には老眼鏡をのせた一人の男が歩きます。片足に草鞋、片足は裸足。銅鑼を打ち鳴らしながら進み、沿道の住民に前もって告げます——媽祖が来るぞ、と。彼が「報馬仔(ほうまーあ)」です。これが大甲媽祖巡行(遶境進香)、台湾を最も代表する宗教の一大行事です。毎年旧暦三月、隊列は台中の大甲鎮瀾宮を出発し、嘉義の新港奉天宮へ参拝に向かいます。往復約340キロ、九日八夜の道のりで、台中・彰化・雲林・嘉義の四県市、百を超える廟を通ります。かつてDiscoveryチャンネルにより世界三大宗教行事の一つ(バチカンのクリスマスミサ、メッカ巡礼と並んで)に選ばれ、毎年数百万人が参加する、台湾で最も貴重な文化資産の一つです。
巡行のルートと行程
隊列は台中の大甲鎮瀾宮を発ち、清水、沙鹿、彰化、西螺、新港などを経て、最も遠い嘉義の新港奉天宮で「刈火(香火を分け取る儀式)」を行ってから折り返します。全行程は約340キロ、九日八夜。毎日まだ暗いうちに出発し、田舎道や町なかを歩き、道々の数百の宮廟が「駐駕」や「祝壽」の接待所を設けて迎えます。ルートはおおむね決まっていますが、毎年少しずつ調整され、沿道の各地は媽祖の駐駕を競って招き、大変な賑わいを見せます。
巡行の隊列
巡行の隊列は大きく、そして厳格で、それぞれの役に由来と役割があります。
● 報馬仔:隊列の先頭を行く先駆け。笠に短い上着、口に煙管、鼻に老眼鏡という独特のいでたちで、片足草鞋・片足裸足。銅鑼を打ちながら、媽祖の到来を沿道に先触れします。
● 頭旗・頭燈・三仙旗:道を開く儀仗で、媽祖の聖駕の到来を告げます。
● 三十六執士:さまざまな武器や儀仗を手にする随行で、媽祖の威儀と格式を表します。
● 繡旗隊:各地の信者からなり、各廟の名を刺繍した旗を掲げます。
● 莊儀團と大鼓陣:巡行の秩序を保ち、鉦太鼓で道を開きます。
● 神輿班:最も中核の隊列で、媽祖の鑾輿を担いで進みます。
鑽轎腳(輿くぐり)
「鑽轎腳」は、大甲媽祖巡行で信者が最も心待ちにする瞬間です。地に伏せてひざまずき、媽祖の神輿を頭上に通してもらい、厄除けと平安を祈ります。神輿が近づくと信者が次々と道端に伏し、数百メートルにも連なる人の列は実に壮観です。老若男女や身分を問わず、誰もが媽祖の前では等しく身を伏せて祈ります。
沿道の人情
巡行の数日間、沿道の住民は自発的に「香案」を設けて出迎え、豊かな供物や、無料の「辦桌(バンケット)」、飲み物、お菓子、弁当、休憩所を用意します。知り合いかどうかに関係なく、「座って、食べて」と信者を温かく招き入れます。この真心のこもった人情味を、多くの人が「台湾で最も美しい風景」と呼びます。沿道の店の中には、数日間店を閉めて接待に専念するところもあります。
現代の参加方法
誰でも自由に大甲媽祖巡行に加われます。申し込みも費用も要りません。全行程を歩き通しても(九日八夜の完全踏破)、一区間だけ同行しても、沿道の一地点で迎えるだけでもかまいません。近年はSNSでの拡散により、多くの若者や外国人旅行者も加わり、台湾の宗教文化を代表する国際的な見どころになっています。巡行の期間中はGPSで神輿の位置をリアルタイムに追うこともできます。大甲媽祖巡行は2008年に国家重要民俗に指定されました。
